JR敦賀駅から車で10分弱。敦賀市野神にある「Kitchen LAB（キッチンラボ）」は株式会社LABwelが運営する飲食店。入口にある大きなキッチンカーが目を引きます。

「Kitchen LAB（キッチンラボ）」の店頭では、敦賀湾の海水を使った天然塩「角鹿（つぬが）の塩」を使ったラーメンやお弁当などを販売。

休日にはJR敦賀駅前や近隣のイベント会場に出店し、キッチンカーでの移動販売も行っています。

店内で働くのはLABwelの職員と障がいのある4名の方。調理を担当するのは28歳のTさんです。

厨房をのぞくと、Tさんがラーメンを作っているところでした。注文が入るとテキパキとお皿を並べ、慣れた手つきでごはんをよそったり盛り付けたりしていきます。

KitchenLabは2022年11月21日にリニューアルオープンした直後から地元で話題となり、お昼時になると多くの人が訪れます。

近くの企業からまとめて注文が入ることも多く、厨房は大忙し。しかし、Tさんはあわてることなく、次の作業を考えながら冷静に作業をこなしていきます。

敦賀市の隣、美浜町出身のTさん。以前は別の事業所に通っていましたが、グループホームで暮らす利用者からLABwelの評判を聞き、3年前からLABwelで働き始めました。

そのスムーズな作業ぶりから飲食の経験者かと思いきや、実はLABwelに入るまで料理はほとんどしていなかったそう。

「料理はここで働くようになってから覚えていきました。初めてでしたが、調理手順がわかりやすいように職員の方が工夫してくれているので、作業自体はそんなに難しくはありません。調理のなかでも特に最後の盛り付けが好きなんです」とTさん。

接客が苦手なTさんは、基本的に厨房で調理を担当していますが、注文が入るたびに手応えを感じているといいます。

「注文を見てリピーターさんが来てくれたのがわかった時は嬉しいですね。忙しくてもがんばろうという気持ちになります」。

LABwelは平成27年の設立以来、障がい者の働く選択肢を増やすため、海岸清掃や寺院清掃、お弁当の調理や移動販売など、さまざまな事業を展開しています。

例えば「角鹿の塩」もその一つ。敦賀市は古くは海辺で塩を焼く煙が上るなど製塩業が盛んでした。そこで「歴史を生かして敦賀らしい名産品を作れないか」とLABwelの職員が塩作りを企画。今では事業の一つとして、利用者の方が製造を手がけています。

敦賀湾の海水をポリタンクにくんでろ過し、平釜を使って炊きあげ天日干しで乾燥させた手間暇かけた塩は、ミネラル豊富でまろやかな味わいだと人気です。

Kitchen LABでは、この「角鹿の塩」を使ったラーメンも人気。さらに新メニューの開発も積極的に進めています。

「この前、角鹿の塩を使ったチャーハンと唐揚げを試作し、おいしかったので販売が決まりました。新しいメニューにも挑戦して、どんどんお客さんを増やしたいですね」とTさんも意気込みます。

Tさんをはじめ利用者の方を見守り、仕事をサポートしているのが、LABwelの職員 大村さん。今の代表に声をかけられ、福祉とはまったく無縁の世界から入社しました。

「LABwelはA型就労継続支援（企業と雇用契約を結ぶ）の一般就労を目指しているので、幅広い仕事を通して一人ひとりに合った働き方を見つけてもらいたいと思っています」と大村さん。

就労支援を利用する障がい者の多くは精神に障がいを持つ方。作業はなんなくこなせるものの、働く環境やサポート体制が整っていないと、なかなか継続した就労には結びつかないといいます。

「私たち職員の役割は仕事を教える以上に、長く働き続けられるような環境づくりや働く方の心のケアをすること。障がいを持つ方が社会で自立して暮らすには、その人に合わせた活躍の機会が必要だと思っています。働くことを通して、障がい者が元気になっていく姿を見るのが大きなやりがいです」。

最後にTさんにこれからの目標を聞いてみました。

「厨房にいても、お客さんの『ごちそうさま』『おいしかったよ』という声を聞くのは本当にうれしいです。自分のできることが役に立ち、喜んでもらえるんだとやりがいを感じています。今の環境は安心して働けるので、とにかくたくさんのお客さんに来てもらいたいですね」。